古畑任三郎「全て閣下の仕業」

某国の日本大使館が舞台で参事官が殺害されるという、何処かで聞いたようでタイムリーすぎるお手軽設定。切羽詰って身近な時事からネタを取り込んだのが見え見えです。どうせなら北朝鮮を舞台にするくらいの気概を見せて欲しかったが、それはさすがにまずいと思ったのか。しかしこのネタでも十分非難を受ける可能性があるような・・・。三谷が不謹慎であると思う線引き基準がどうなっているのか興味が沸きます。
さて、内容は相変わらずのご都合展開。その場しのぎにしからならない苦し紛れの偽装工作を、さもしたり顔で古畑任三郎が解決することの意義について考えさせられたり、現地人だと思われていた人が実は日本人だったというオチは笑い所なのか納得(?)所なのかと悩まされてみたりと、ミステリとしては杜撰すぎる出来でした。
とはいえ、このドラマの見所は犯人役である大物俳優と古畑任三郎との息詰まる掛け引きにこそあるので、そんな些細なことは無問題。少しも魅力を損ねることにはなりません。犯人を心理的に追い詰め、知的策謀を巡らす様はなかなかのもの。まるで霊に憑依されたがのごとく、唐突に述懐を始め出す登場人物など最高です。ラストシーンの動機付けが少し弱かったように思うこと除けば、エンターテイメントとしては合格点。