僕と彼女と彼女の生きる道 第七話

どうにも怪しくなってきた。前回の小旅行を機に、物語の方向性が変わってきたように思う。親子の絆を見直すことを通じ、豊かな心を取り戻していく自己探索を最後まで貫くとばかり思っていたが、そうではないのかも。個人(の豊かな生活)を許容しないキャリア社会。そこに立ち向かう徹朗の苦難、と物語の焦点がシフトしてきたように思う。前回までの話は、主人公がキャリア社会に立ち向かう理由付けを丁寧に説明した序章でしかなく、これからは本題である「男のプライド」を軸に物語が進んでいくのだろうか。個人的にはこれまで通り、親子の絆を中心とした自己探索物語を続けて欲しかった。
自身の内面から自身を取り巻く環境(社会)へ。この急激な視点の変化は、苦悩の次元が低下し一般化したような印象を受ける。これからは個人と社会、個人と個人の兼ね合いを問題として取り上げていくのだろうか。ならば作りは丁寧だが凡庸でありがちなドラマとなってしまいそう。元部下を交えた色恋沙汰が持ち出される必然性も現時点では理解できない。親子関係の重要視と相反する事柄。井上部長の死共々、視聴者の関心を惹き付ける為だけに急造した山場でなければいいが。
自殺未遂によってキャリアへの呪縛から解き放たれた井上部長。ゆらに続き徹朗の良き理解者になるかと思われた矢先の急逝。彼の死は徹朗を待ち受ける社会的困難を暗示しているのかもしれない。しかし同時に、徹朗同様心変わりした彼を舞台から下げたことは、「豊かな心」をこれ以上掘り下げて描くことはないという意思表示とも思えて嫌な感じ。井上部長役が演技巧者であったことも含め、残念な展開。