絡新婦の理(京極夏彦)ISBN:4062735350

京極作品を全て読んだわけではないが、多様な登場人物が複雑に入り組む本物語の性質上、氏の作品中もっとも難解な部類に入るのではないのかと思う。頁数が劇的に多いこともさることながら、数々の伏線と多くの目線から語られる同一の物語。それらを時系列順に組み合わせ消化するために何度も頁を戻り、パズルのような人物相関図(手製)を埋めていく。片手間だったとはいえ、結局読了までに一ヶ月もの時間を費やしてしまった。懲りることなく、より深い理解を得る(味わい尽くす)ため現在も再読中。
視覚に訴えかけてくる巧みな描写が素晴らしく、特に終盤のはじめに訪れる大立ち回り。真犯人によって仕組まれた最悪の結末の到来を予感させる流れ。不安と苛立ちを掻き立てつつ一気にたたみかける技量はさすが。理屈く臭く薀蓄溢れるスタイルは好みが分かれるところか。倒叙に近い形式を採ったためか尻つぼみで終わったような読後感。短時間で読み終えることのできない作品(京極作品)に倒叙は相性が悪いと思う。