「生首にきいてみろ」法月綸太郎 追記

ネットを巡回して色々と見えてきた。何故この作品が「このミス」で第一位をとるほど高く評価されているのか、何故わざわざあのような主人公に自らの名前を与えているのか。 まず評価について。本作はハードボイルド界の巨匠であるロス・マクドナルドの作風を…

「生首に聞いてみろ」法月綸太郎

石膏像の首が切り取られ何者かによって盗まれる。彫刻家の川島伊作が病身を押して製作したもので、モデルは娘の江知佳。川島の回顧展を画策する宇佐見は事件を表沙汰にしたくない。不安を拭いきれない親族は、探偵・法月綸太郎に相談を持ち掛ける。 「このミ…

読書日記

死体洗いのアルバイト(坂木俊公) 現代医療に纏わる迷信・珍常識の類を合理的・経験的に検証した教養本(サブカル本)。筆者は現役精神科医で『医学都市伝説』というサイトの運営者。『医学都市伝説』を単行本化したものが本書だそうだ。 筆者の有する医学…

暗黒童話(乙一)

白木菜深は事故によって片目を失ってしまう。程なくして眼球の移植手術を受けるが、幻覚に襲われるようになる。眼球提供者が生前に観た風景が眼球の記憶として再生されているらしい。その回数は日増しに増えていく。事故のショックで一時的に記憶を失い、か…

ZOO(乙一)

書き下ろしの新作を含む短編集。よって粗筋は省略。 帯には「天才」の文字が踊る。筆者の噂は以前から耳に(目に)していたが、実際に本を手にとってみたことはなかった。率直に言って天才という評判に間違いないと実感。 ひとつのセンテンスに目を通しただ…

重力ピエロ(伊坂幸太郎)

遺伝子情報を扱う企業に勤める主人公と、落書き消しを仕事とする父親違いの弟「春」。春がこの世に生を受けたのは母親がレイプ犯に襲われたことに因る。兄弟は世間の冷たい視線を気にすることなく育てられた。両親は二人に分け隔てなく愛情を注ぎ、弟は兄を…

海辺のカフカ(村上春樹)

15歳の誕生日に少年は家を出る。少年には「カラス」と呼ばれる不思議な存在が常に付き添い、時おり姿を現し少年を導くように暗示的な言葉を投げかける。一方で、「ナカタさん」もおぼろげながら自分に課せられた使命を感じとって旅に出る。ナカタさんは猫と…

そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティー)

絶海の孤島、インディアン島が舞台。U・N・オーエンと署名された招待状によって、十人の客がバカンスに招かれた(内二名は使用人夫婦)。年齢も職業もばらばら。互いに面識もない彼らであったが、実はある共通点が。全員が過去に殺人容疑・疑惑をかけられな…

半落ち(横山秀夫)

「このミステリーがすごい!」(2003年 国内編 )第一位受賞作品。また、第128回直木賞の候補になるも、選考会にて「重大な欠陥」があると指摘されて落選したことでも有名。詳しくは知らないが、物語の根幹を成す部分に現行法上実現不可能なところがあるとか…

オタク学入門(岡田斗司夫)

はじめに断っておくが、あわよくば岡田氏を批判してやろうと思って読んだ。以前読んだサイゾーでの対談記事やたまに再放送している『BS漫画夜話』など、僕の目に付くところに出てくる氏の振る舞いが鼻についてしょうがなかったので。世の風がオタクに冷たく…

おれに関する噂(筒井康隆)

たまにはカテゴリ[本]も更新。 著名作家である筒井氏の著作物は、古本屋にて安価で手に入れることができるので、手頃感があっていい。短編が多く、基本的に平易な文章で書かれているということも、様々な面で彼の著作物に対する敷居を低くしているように思う…

スティール・ボール・ラン

回が進むにつれ、セルフパロディの疑いが強くなってきた。いくらなんでもアブドゥルがあっさり敗退しすぎだ。スタンド等の特殊能力も見られなかった。 調べてみたところスティール・ボール・ランレース開催時の1890年、「ディオ・ブランドー」はまだ海底の棺…

絡新婦の理(京極夏彦)ISBN:4062735350

京極作品を全て読んだわけではないが、多様な登場人物が複雑に入り組む本物語の性質上、氏の作品中もっとも難解な部類に入るのではないのかと思う。頁数が劇的に多いこともさることながら、数々の伏線と多くの目線から語られる同一の物語。それらを時系列順…

バカの壁(養老孟司)ISBN:4106100037

インパクトのある題名と作者名、知的好奇心を刺激する書き出しに惹かれて手にした話題の本。共通認識や相互理解を妨げる根本原因を、常識を揺さぶる観点から論理的に解き明かしていくものだと期待していたが、内容は全くの別物。様々なことを身体性に還元さ…

蛇にピアス(金原ひとみ)

いわゆるセックス&バイオレンスもの。と言い切ってしまえば語弊があるかもしれないが、ボディピアスにセックス、暴力殺人と刺激的な描写が続く。どうにも身構えてしまう作品。しかも作者は若い女性。こだわり無く接することは難しい。幾分恥ずかしくなる作…

蹴りたい背中(綿矢りさ)

芥川賞受賞二作が掲載された文藝春秋を購入したので簡単な読書感想を。 読み物は書き始めこそがキモとされている。そのためか、冒頭から滲み出る作者の強い気負いに当てられ、読み始めから出鼻を挫かれることがある。この小説からもそういった印象が。冒頭以…