僕らの音楽〜OUR MUSIC〜

普段よりもテンション低め。愛想笑いも控えめで落ち着きのある松浦。”あなたの肩書きはなんですか?”との問い掛けに、皆はアイドルと呼んでくれるが、自分では歌手であると思っている、と答える松浦。番組では「松浦=歌手(≠アイドル)」であることを繰り返し強調していた。それは『いい日旅立ち』と『風信子』、山口百恵松浦亜弥、両者を谷村新司の口から同列に語らせたことで決定的。この番組は松浦の脱アイドル宣言を意味していたのかな。
風信子』について。はじめはいつものどおりリズムを感じながら歌っていたが、思うままに気持ちのままに歌ってみろと谷村に助言された。その一言で憑き物が取れたかのようにすっきりした。楽になったと話す松浦。その結果としてあの『風信子』があるのだとしたら、やはり松浦自身も自らが「思うまま」の歌手(≠アイドル)として大成することを望んでいるのだろう。それは現行のアイドル路線に縛られ、ファンが望む偽りの自分を演じていくことに疲弊していることも意味しているのかな。話の節々からそう感じた。望まれる自分とありたい自分。珍しく自己意識を漏らす松浦。
大勢の人から愛されることについて。この問い掛けの本質は後に続く番組の流れから、ファンから愛される(望まれる)松浦像を受け入れることが出来るかどうか、というものだと想像。受け止めることが出来る、受け止めたいと平然と言い切る松浦。賢い彼女のこと、無謀さからではなく望まれる自分になれる(なりたい)という野心がそういわせているのかな(とはいえ「歌手」路線では若干厳しいかもしれないが)。負けず嫌い故の挫折知らずとも語る松浦。自己愛や無邪気さだけでは説明しきれない意志の強さは、殆どのファンにとってもはや自明な「本当の自分像」を幾度となく繰り返し語り続ける後藤真希とは対照的。(非健全的な石川梨華とは異なり)望まれる自分を肯定的・建設的な方向に認識・受容することが出来る得る強さというべきか。(松浦が特別なだけで後藤や石川は年相応でありそれが魅力的でもある)。崇高な気高さを感じさせるそれは、皮肉なことに、番組を通して否定し続けた(本義としての)「アイドル」を松浦の内面に意識させる。
蛇足。”あなたは何者ですか?”との問い掛けに名前を答えた松浦。それを受けて「優等生的なお答え」とするのは意味不明で流れとも矛盾。一番偏見的な見方をしているは鳥越俊太郎だったりする。