ほーむめーかー

裏番組『上沼恵美子のおしゃべりクッキング 』への誘惑をこらえて視聴(録画するなどの積極性はないにしろ、ついつい料理番組にチャンネルを合わせてしまう方なので)。
仔犬のワルツ』などとは異なり、今どき珍しいほのぼのとして心温まる正統派ドラマなのかな。演出に懲りすぎることもなく、安心して観ていることが出来そうだ。二三回ほどしか観ていないのであまり自信はないが、多分「人は皆良い心の持ち主だ」という性善説にのっとった筋書きが根底にあるように思った。
幼児虐待疑惑であったり嫁姑問題であったりと、時事的・普遍的な問題を毎回のテーマとして持ち出し、屈託がなく真っ直ぐな性格の愛すべき主人公、山路いずみ(中澤裕子)がわだかまりを解決していく。日本的美徳でもある「本音と建前」が悪い形で横行し、じめじめとしてガスが溜まりがちな共同体に風穴を開けていくのが異端者いずみの役割。第三者の目にはそれが「幼児虐待」や「嫁いびり」としか映らなくとも、当事者である親子間はしっかりとした愛情が存在していたり、(意地から大っぴらには出来ないが)姑の心の内では嫁を認めていたりと、すれ違いの原因は誤解でしかない。全てを肯定的に受け止めていこうとする(昼ドラマでは普通のことなのかもしれないが)今どき珍しい健全なドラマのようだ。
嫁姑問題の「嫁−姑」関係にしても、幼児虐待の「親−子」関係にしても、何をもって「いびり」や「虐待」とするのか。判断基準は極めて曖昧。法によって強引に規制しようとする昨今の風潮は、両者の結びつきの根底に「信頼」を見出すことこが出来なくなったことが一因としてあると思う。当ドラマはそのような後ろ向きの風潮に真っ向から対抗し、現代人が陥りがちな、開けっぴろげで軽薄なアメリカンスタンダードなどに毒された観点から、日本に古来から息づく精神文化を安易に忌むべき因習として見下す傾向に疑問を投げかけ、尊重すべき伝統文化として再び価値を見出そうとする試みであるかのように思う(←半分はこの場に便乗した自論主張)。(そのためにいずみのような「異端者」が必要であることはとても皮肉めいてはいるのだけど。)
相変わらず「素の自分」しか演じることが出来ないこともあってか、ドジで毒舌といったいずみの役柄が中澤本人の性格をなぞったものではないかと思える節もある。しかし社交性の部分で決定的に異なっている。あえて言えば、「いずみ」という役柄は中澤裕子にとっての理想形かなとも思う。思い切りのいい演技を見せ、役者として一皮剥けたような印象を抱かせる。この勢いでタレントとしても一皮剥ければいいが。