ウォーターボーイズ2 最終回

ここまで無理のあるドラマは久しぶりに観た。シンクロ公演部分に大幅な比重を傾けるあまりドラマ部分がスカスカになっている。最終回にして「シンクロ人気に便乗したなんちゃってドラマ」に成り下がってしまっている。おそらくは本ドラマに先駆けて放送されていた『ウォーターボーイズ選手権』の視聴者を取り込もうと色気を出したのだろうが、おかげで前回までに積み上げてきたもの殆どを投げ出す格好に。これは連続ドラマの最終回などではなく、シンクロを盛り込んだ単発の二時間ドラマというべきものだろう。


前作『ウォーターボーイズ』ではドラマ部分とシンクロ公演部分とを思い切って分離させることにより双方の両立を可能とさせていたが、本ドラマでは逆に双方が足を引っ張り合っている。大体にして約四十分間というシンクロ公演部分は時間を割きすぎだろう。そのため、長丁場しのぎとして「五段やぐら」の成否という山場を急造する必要性に迫られている。そして、失敗までも演出として取り入れたことによってシンクロ公演部分のショーとしての完成度は下がり、準備段階として「五段やぐら」練習風景を急遽差し込まれることになったドラマ部分にも負担を強いる結果に。見事なまでの共倒れ。まだシンクロ公演部分のみに全精力を注いでいた方が良かったと思う。


しわ寄せを喰うこととなったドラマ部分は当然のように全体的に消化不良となっている。父親との確執や三角関係気味の恋愛模様、そしてコーチに纏わる諸問題など、シンクロ公演達成という主要テーマと平行して描かれてきた各要素の処理に丁寧さは感じられない。
たとえばコーチのドーピング強要疑惑について。ドーピングは選手が独断で行ったのが真相であり、コーチは選手をかばう形であえて汚名を被ったという落着については百歩譲ってよいする。しかしその真相を知っただけで長い間心を締め付け続けていたわだかまりが雲散霧消し、笑顔で男子シンクロ部の顧問を引き受けたりはしないだろう。真相がどうであろうとも、コーチがドーピングを強要したと思い込んだことによって被った精神的苦痛や、それによって多少なりとも狂いが生じてしまった人生については取り返しがつくものではない。少なくとも振り上げたこぶしの下ろし場所に困るはず。つまりは踏むべき手順が抜けてしまっている。
この場合で言えば、ドーピングを行った本人が身の振りかまわず協会にかけ合うことによってコーチの汚名を晴らすとか、もしくは当事者たちの前から姿を消すなどの代償行為を示せば良かったと思う(問題の元凶であるドーピングを行った本人が他人ヅラで無責任な言動をしていい訳がない。しかも何食わぬ顔で協会に勤めてるし)。しかし時間がない所為かそういった手間暇が省かれて突然の和解へと一足飛びをしている。まるで蒔いた種が芽を出す前から掘り出しているかのような無理が感じられる。


褒めるべき点もあったような気がするが、最終回のあまりといえばあまりの構成に記憶が飛んでしまった。皮肉でもなんでもなく、出演者の弾けるような笑顔は良かったと思う。出来のいい前作と比べてしまうのも酷な話かもしれないが、前作のような熱意に甘えずあくまで自分達の力で問題解決を図ろうとするストイックさが殆ど感じられなかったのは残念か。まあこれが典型的な青春ドラマのあるべき形なのだろうけど。