乱歩R 第七話「地獄の道化師」

全体を通じて良い雰囲気を醸し出しているドラマ。本上まなみを含めた脇役もいい味を出している。ただ明智小五郎役の藤井隆だけは良くわからない。ありえないとは思いつつも、突如オカマに豹変する明智小五郎の姿を想像。暴れるオカマが事件を解決!・・・どうにも藤井隆を役者として見ることが出来ずに困る。彼を取り巻くオカマイメージが強すぎるのだ。役者として新境地を開く意味合いでもなければ、藤井のキャスティングには(主にイメージ的に)無理があると思う。
藤井とは対照的に、忍び寄る犯罪者の恐怖に脅えるお嬢様という石川梨華の役所(キャスティング)は悪くなかった。最近でこそ払拭しつつあるが、石川といえばネガティブ。以前は事あるごとに年上メンバーにいびられしょぼくれ顔を曝していた。ハロモニコントで演じていたのも後ろ向きな女学生役(現在は薄幸主婦とめ子)。演技はそこそこだったが、彼女にとってはまり役だったと思う。
このドラマの石川同様、美音子(ブレーメン)を演じる辻希美もはまり役だと思う。共に、演技を越えたところに惹き付ける何かがあるように感じる。おそらくそれは役者自身が持つイメージ。個性と言い換えてもいいと思う。
辻の場合、美音子とのイメージ合致が「はまり役」を形成し、彼女を魅力的に映す。ただ、それを「辻は役者向き」と一般化してしまってはさすがに無理があるし、逆に演技だけをあげつらった評価も不自然に思える。つまり、断片評価は断片評価でしかなく、全体評価に成りえないのではないかということ。
演技を無視し盲目的に評価する人も、中立視点を意識するあまり個性から目を背けてしまっている人も、どちらも等しく片手落ちだと思う。褒めるならともかく、断片評価をより所に役者「辻」や役者「石川」を否定してしまうのは少々乱暴すぎる。少なくとも技量だけで役者の価値は決まらない。田村正和市原悦子の存在がそれを証明している。辻は能天気。石川は一本調子の声。それぞれの短所であるが、同時に個性でもあると思う。