ミニモニ。でブレーメンの音楽隊 第九回

第一部から更に遡ること五十五年。第二部からは二十五年前、終戦から四年後の物語。敗戦の混乱が続く中、ひとりの少女(雛子)が上京。住み込みで働くために犬塚家へ。雛子(加護)は明るく働き者だが、マイペースでおっちょこちょいのところも。犬塚家の禁忌(引き篭もりの息子)に触れてみたり、鞄をスリに盗まれたりと何かとお騒がせ。スリの少年・進は犬塚家と顔見知り。配給制による物品不足を補う調達係。盗みに手を染めるのは仲間たち(戦災孤児)を養うため。雛子は進に連れられハーモニカの演奏会へ。初めて体験する楽しいひととき。感激と共に空襲で亡くした家族への思慕が募る。引き篭もりの息子・健志の部屋からもハーモニカの音色が。健志のために犬塚家の人々が心を痛めていることを知る。事情を知り使命感に火がつく雛子。健志の世話係をしたいと申し出る。
まだ見ぬ東京に期待が膨らむも、現実は田舎育ちの純粋な少女が思い描くものとは違っていた。配給制による貧しい暮らし。暗く沈みがちな人々(犬塚夫婦)。そして何より、生きるために犯罪に手を染める子供たち。華やかな想像とは似ても似つかず。東京は敗戦が色濃く影を落とす街だった。雛子は戸惑いを隠せない。
時代設定も手伝い、コメディを装いつつも中核部分はシリアス。よりメッセージ性の強いものに。これまで以上に作り手の意気込みが感じられる。
遡行的に各物語を連結したため、この第三部は全てのはじまりでもあり終わりでもあることに。まるで盆と正月が同時に訪れたようなもの。濃密な内容になること必死。雛子の物語がこれまでの物語とどのような繋がりを見せ、どのような荒技(タイムスリップ?)を用いて物語を締め括るのか。不可避である健志の死をどのように描くのか。これまで張った伏線の回収と、見所は盛り沢山。同時に責任も重大。演技経験豊富な加護の配役も頷けるところ。これら難題を消化する手腕に期待。取りあえずは、悲しみを抱えつつも明るく振舞い、人生を前向きに捉えようとする雛子が、暗く頑なな人々(犬塚家)の心を解きほぐしていくことあたりから始まりそう。