飯田と石川、卒業発表

モーニング娘。のシステムとして、計画的に卒業を予定された者は、例外なく事前に何らかの下準備を積まされる慣例があり、卒業後はそれを基盤に活躍していくことになる。中澤裕子しかり後藤真希しかり・・・。歌に絵画にと、地味ながらも意欲的にソロ活動を展開させてきた飯田圭織は、誰の目から見ても、いつ卒業してもおかしくない状況にあったと思う。彼女の卒業に関しては、驚きよりも「とうとうその時がきたか」という感慨を持って受け止めた。
一方で、石川梨華卒業の報にはただただ驚いた。これまでの卒業に纏わる慣例と照らし合わせ、まだ石川には下準備が施されていないと油断していたからだが、まさか「ハロプロエッグオーディション」合格者とユニットを組む形でソロデビューとは。目から鱗が落ちる思いがした。なるほど、それならいけるかもしれない。
これまでモーニング娘。を巣立っていった卒業生たちのように、石川梨華を本格派(?)ソロ歌手としてひとり立ちさせることは、一般的にいってかなり心もとない。(役者に仕立て上げるという選択肢も考えられるが、石川の演技力云々以前に、おそらくは事務所側のノウハウ的な理由から無理なのではないかと思う)。みすみすソロとして売り出しの「旬」を逃すわけにはいかず、ならば逆転の発想でと、「逆矢口」のポジションを与えることにしたのだろう。
となれば、思いを馳せずにいられないのが「タンポポ。」と「カントリー娘。」の両ユニット。石川梨華が参加することになったばかりに、両ユニットは新曲をリリースするたび、まるで侵食されるがごとく、良くも悪くも「石川色」を前面に押し出す方向で変貌を遂げた。当時は、製作側の気まぐれか露骨な石川贔屓としか思えず、「タンポポ。」・「カントリー娘。」両ユニットの存在意義すら否定しかねない理不尽な扱いに首を傾げたものだった。しかし今は、それらすべてが近い将来に訪れるであろう、「石川(を中心とするユニットで)ソロデビュー」を見越しての「下準備」の一環だったのかもしれないと思えてしまう。両ユニットに対して行った改変が、必ずしも「石川梨華・ソロ化計画」として出発したものではなかったかもしれないが、こうした先行きが示された以上は、どこかの段階で石川卒業を見越した下準備として軌道修正されたことは間違いないと思う。
しかし本来、モーニング娘。から誰かをソロとして切り離さなければならないとするならば、最初に白羽の矢が立つべき人物は藤本美貴だと思う。ソロ活動を経てモーニング娘。としての経験まで積んだ彼女は、現在、これまでにない充実の時を迎えているようにみえる。何よりも、どんなことにも主体性のある姿勢で取り組む強さというか気高さを持ち合わせている(と思わせる)のは、ハロプロ内では松浦亜弥以外に彼女をおいて他にはいないだろう。「ROMANS」入り拒否を強く示した「セクシー女塾」の途中降板(←もともと降板する予定だったのかもしれないが)。良く言えば素直に、悪く言えば長いものには巻かれろ的思考で流され続けるメンバーが大部分を占めるなかで、藤本の存在は異例。個人的には、憧れの対象にすらなり得る人物で、その勢いをもって小池百合子大臣あたりの奥歯をガタガタいわせて欲しいものだ。
 しかし藤本美貴を入れて石川梨華を出すとは。モーニング娘。を中心としたハロプロの展望は、少なからず迷いが生じているように思う。浅薄な僕には窺い知ることのできない戦略が存在しているのかもしれないが。
余談になるが、計画的に卒業を予定されたメンバーの中で、なぜ保田圭だけが例外として特に何の下準備も施されずに放出されたのか。たしかに、あの時点で保田圭の絶頂期であったとは思うが、現時点から振り返ってみるに、保田の卒業にはモーニング娘。人気の起爆剤的な意味合いしか見出せず、まったく残念に思う。