波田陽区について

テレビへの露出度の増加と反比例するように、毒舌ネタのなまくら化が進行していた波田陽区。しかし紅白歌合戦に応援ゲストとして出演したあたりから様子が一変。毒舌に本来以上の切れ味が戻ってきたように感じる。大晦日深夜(元旦早朝)放映のお笑い番組では共演者に辛辣な毒舌をかまし、あまつさえ睨み付ける始末。とんでもない揺り戻しが発生しているようだ。
メジャーであるが故に特権的に見て見ぬ振りをされている誤謬や欠落、またそれらを原因とする矛盾について持ち前のスタイルで切り込むのが波田陽区本来の芸風だったわけだが、最近では同席した芸能人へのリップサービスへと堕していた。反骨を装いつつもその実、やっていることは権威(芸能界)への媚びへつらいでしかない。はなわと何ら変わるところはない。
はなわの権威への媚へつらいは始めから首尾一貫していたが、波田陽区についてはどうか。メジャーへの反発が波田陽区の芸の本質だとするなら、本人自らメジャーの一員となってしまえば芸が立ち行かなくなるのは道理。まして成り上がるために権威に取り入ってしまっては自己矛盾すら引き起こすわけで、波田陽区に関しては「芸風を貫くこと/芸能界での成功」の両立について端からジレンマを抱えていたといえる。少なくとも「芸風を貫くこと」がそのまま「芸能界での成功」に繋がりにくい状況ではあると思う。
波田陽区の独特な言い回しとキャラクターをもってすれば、ひとまずは芸能界でそれなりの居場所を確保することは可能だと思う。大物に気に入られでもすれば芸能人として安泰だ。長いものに巻かれてしまえば楽でいい。ただし芸風への拘りさえ捨て去れば、だが。最近の波田陽区からはぬるい安定を捨て去ったような印象を受けるが、真意はどうなのだろうか。年末年始なので一時的に気を張ってみただけなのだろうか。それとも自分の芸風が世間に受け入れられたとの油断からくる甘えなのだろうか。今後の動向が気になるところだ。