細木数子について

この人の本業は占い師らしいが、テレビで観る限り訳のわからないことになっている。
彼女のやり方を大雑把にいえばこうだ。まず開口一番、本人しか知り得ない裏情報を言い放つことによって主導権を確保すると共に自分は何でも知っているという印象付けを行い、その後に続く出鱈目な放言に対する反論を強引に封殺し、力技で相手を納得させてしまうというもの。しかし、これって「占い」なのか。僕にはディベート術にしか見えないのだが。定番台詞となっている「〜歳になったらあんた自殺するわよ」、「〜年後あんた芸能界辞めているわよ」といった物言いが百歩譲って予言(=占い)的であるとしても、何人にも使い回している時点でNGだろう。もし個々人に対応したものではなく形式として使い回されているものが「占い」だとするなら、それはおみくじレベルでしかないと思う。
以上が対芸能人様式。対素人様式はこれとは若干異なる。対芸能人のように下調べが出来ない(意味がない)ためか、出会い頭の一発を放つことは殆どない。相手の話を聞くことを前提とした対処方式が主であるように見える。そしてこれはどちらの様式にも共通することなのだが、殆どの相談を最終的に説教へと落とし込む。そこで語られるのはまた古めかしい道徳論で、簡単にいえば不幸の原因は自分自身にこそあり、心がけ次第で人生はどのようにでも開けるというもの。たとえば夫の素行不良に関する相談には、妻は夫に尽くし少々の理不尽には寛容と忍耐の心で臨めと教唆する。そうすれば事態は好転する、のだそうだ。前時代的な女性像を奨励する傾向も見られる。
占いの責任を相談者に丸投げすることが占い師の常套手段だとしても、その裏付けを現在では廃れて久しい価値体系に頼っている時点で説得力など期待できるはずもない。どうしてもその価値体系で押し通したいならばそれなりのお膳立てが必要であると考える。具体的には相談者を一種の催眠状態に追い込む舞台装置のようなものが必要なわけで、それは相談者を細木屋敷に誘い込むことであったり講習会に通わせることだったりするのだろうけど、テレビという第三者目線が介在する場においてはどうすることも出来ない。


まあ対芸能人においては無内容の「占い」だとしても相談する側も話題性という意味でメリットがあるわけで、番組がエンターテイメントであることを目指している以上は上記のような指摘が的外れである可能性もある。しかしそのような利害関係とは無縁のところにいた若手俳優(?)杉浦太陽に対しても「あんた30歳で自殺するわよ」と他の芸人と同じ調子で恫喝に及んでしまったことは批判されるべきだと思う。真に受けていて可哀想だった。そういったことは仲間内だけですればいい。


(18:30から番組が始まるので急いで更新。乱文失礼)