直球ユニット

先の矢口の脱退がモーニング娘。としての手続き上、正当なものであったのかどうか、またそれはメンバー間で納得いく処置であったのかどうか等々、これら細部についての解釈は様々ある。だがスキャンダルという(矢口の)不幸が彼女を脱退に追いやったとする根幹認識が共通の土台として存在するため、それらの議論は皆似たようなベクトルを持っていた。しかし、『やぐちひとり』での活動を踏まえて考えるとどうか。その土台すら疑わしくなってくる。
これまでハロプロが採ってきた戦略はとても分かり易いものばかりだった。たとえば、事務所一押しのメンバーと一般メンバーとのプロモーション格差は、一般メンバーを気遣いたくなるほど露骨なものであったし、またあるメンバーがモーニング娘。の活動とは別個にソロ活動を始めでもすれば、それは殆ど例外なく卒業を見据えたものであることを意味した。天上人つんくによる創作が変化球なので惑わされがちだが、末端で繰り広げられるプロモーションはまさに直球。それも思わず見逃し三振してしまうほど予想を超えて何の捻りもない直球であった。
やぐちひとり』という番組が裏付けることは何か。たとえスキャンダルが起きなくとも、矢口の卒業はそう遠くない将来に予定されていたということだ。とすれば、スキャンダルだけが「矢口のひとり立ち計画」の一環でなかったとはっきり断言することができるのだろうか。「脱・アイドル路線」を踏まえたとしか考えられない松浦スキャンダルの前例。そして現在、矢口はスキャンダルを契機に各バラエティ番組へ出演ラッシュをかけている。状況証拠は見事なまでに揃っているのだ。…以上は陰謀論の域を出ない単なる推論でしかなく、常識的に考えれば、真相はスキャンダルを逆手に取った顔売りということにでもなるのだろうか。とはいえ手段を選ばない直球プロモーションとしては決してあり得ない話ではないと思う。


シャッフルユニットの時期。ハロプロは直球プロモーションを用いることから、他に際立って少人数で構成されたユニットがあれば、それがメインであるとしてまず間違いはない。今回は『セクシーオトナジャン』『エレジーズ』『プリプリピンク』の三組。人数構成は順に三人、四人、四人。これだけを見ると、露骨なユニット間格差があるようには思えない。では、ついに人気偏重の贔屓主義から脱却し、各人の能力と頑張りだけを拠りどころとする実力主義への道が開いたのかといえば、決してそうではない。ベリーズ工房モーニング娘。だけで今回のシャッフルユニット三組、いずれにも選ばれなかった者が十名以上存在している。シャッフルに選抜されただけで既に贔屓なのだ。
要するに、無駄な頭数を切り捨てることによって三組とも直球に仕立てたわけだ。贔屓主義ここに極まりだが、参加だけさせて無責任に放ったらかすよりはよっぽどマシだとは思う。ハロプロの大所帯化により、飼い殺しの憂き目に遭うメンバーが続出していたことを考えれば、それ自体は認めることはできなくとも、建て前だけの平等を捨て去っただけでも前進と言える。フットサルやコントで辻褄を合わせるような偽善は見ていて悲しくなる。
またこれを悲観的に受け取れば、現在プッチモニをはじめとする各サブユニットが活動停止であることが物語るように、日のあたらない位置にいるメンバーの面倒を見る余裕がなくなったとの解釈もできる。日があたるもあたないも作り手側のさじ加減ひとつなので、全くもって無責任な話。ただ、ひとつ引っかかるのは『プリプリピンク』の存在。構成メンバーから推測するに、これはモーニング娘。在籍中、相対的に上へとあがりすぎた飯田に対する引き下げが主目的であるような気がする。
いずれにしても、売り上げ低迷、人気凋落と言われ放題、窮地に立たされたハロプロが何らかの方向転換を図ってきたことは間違いないだろう。松浦スキャンダル、矢口スキャンダルときて、今回の厳選シャッフル。その方向転換とは、ずばり手段を選ばない直球の連投であると見ているのだが、実際のところはどうなのだろうか。贔屓から漏れたメンバーへの処遇も含め、これからじっくりと見極めていきたいと思う。